老化との戦い(7) [随想]
老化との戦い(7)
「老化」の進行を遅くさせながら、余分の人生を他人に迷惑をかけずにエンジョイすることが出来れば、の一念である。矢張りそれなりに努力が要るものである。悲しいことではあるが、一面楽しみでもある。
テニスにしても「片足、片目の身体障害者だからね」と言いながら、白内障の片目と痛いひざを無理しながらパートナーに迷惑をかけながらも、仲間に入れてもらっている。ボールの位置が確認し難いだけに我ながらのへまが少なくなくなる。迷惑をかけていることが分かるだけに辛いことではあるが、ある意味では「必死」なのである。
しかしいくら努力をしても、それは「勝つことのない」戦いなのである。しかし、自分は走れないから、よく走れる人と組ませて、と頼むと、よく走れる人がよく走ってくれるので、却って勝つことが多くなる。とにかく、悲しいことに非可逆過程はあくまでも非可逆なのである。
最近白内障の手術をしましたので、現在は両眼とも一応0.9 です。
歳をとって楽しくなってきた ・・・ 次回に続く
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老化との戦い(6) [随想]
老化との戦い(6)
「老化」は避けられなくても、せめてその進行速度を遅くさせることができればということである。以前に作った中国語の数千の言葉のカードを持ち歩きながら、電車の中で心がけて復習をすることをしているが、暫く休むと忘れがひどい。
一方毎日「万歩計」をポケットにして、この一年の間毎日痛む左ひざをあやしながら一日一万歩以上を歩いてきた。確かに良さそうなことであるが、近頃になるとそれが却って膝をすり減らせてしまった感じ無きにしも非ずである。駅などの階段の昇り降りはできるだけエレベータのお世話になることになる。
慶応病院のある医者が「痛いひざを余り使わないようにしなさい」と言ってくれてはいるが、使わないでじっとしていると如何にも全身の「老化」が進むような感じであるので、自己流に始めた訓練も心がける。
「老化」の進行を遅くさせながら ・・・ 次回に続く
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老化との戦い(5) [随想]
老化との戦い(5)
怖いのは、「老化」が自分では分からないで自分なりに老化して考えていることではないだろうか。創造的な考えも生まれ難くなってくる。自然科学者としては致命的なことである。ただ長い間のいろいろな経験をつんできているだけに若い連中が思いもよらないことを教えることが出来ることもある。今二つの研究室の毎週のゼミに出さして貰いながら新しい時代の進歩を身に感じ、頭の使い方の訓練にもなっている。話は直接聞き取りにくくなっても画面に出てくる実験結果が分かるだけでも有り難い。少しは頭を使うように、とホームページに筆を入れたりもする。
「老化」は避けられなくても ・・・ 次回に続く
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老化との戦い(4) [随想]
老化との戦い(4)
多分日常に使う言葉や表現の種類も少なくなって来ているに違いない。英文を書いていても適当な言葉が出て来なかったり、「綴り」が不確かになり、辞書のお世話になる。第一パソコンを使っているせいでもあるであろうが、手書きをするとてきめんに漢字が危くなって来たことが分かる。昔はそんなことは少なかったのに、である。恥ずかしい誤字を書くのも嫌なのでつい念を入れて辞書の世話になる。
怖いのは、「老化」が ・・・ 次回に続く
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老化との戦い(3) [随想]
老化との戦い(3)
ある本を読んでいたら、出ていた、「一人でつかまらずにステテコをはけなくなったら老化した」のだそうである。片足で平均をとって立ち難くなったということであろう。私は幸いにスポーツをやっているせいか、その意味での老化は未だではあるが、自分でステテコをはくごとにその言葉を思い出す。
日常に使う言葉や表現の種類 ・・・ 次回に続く
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老化との戦い(2) [随想]
老化との戦い(2)
「八十年も使うと磨り減りますよね」リハビリのアンちゃんが、慰めるのか、諦めろというのか。ゼミに出て話が聞き取れないことが少なくない。振動数の低い方は余り落ちないのに、高い方、つまり子音が聞き取りにくくなると音は聞こえても何を言っているのか分かり難くなる。それは子音の多い英語の場合特にひどい。昔はそんなに不自由しなかったのに、である。一対一の場合は未だいいのだが。
「一人でつかまらずにステテコ ・・・ 次回に続く
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老化との戦い(1) [随想]
老化との戦い(1)
世に 「歳には勝てない」 と言う。確かに実際に歳をとらないと実感がないだけに、その本当に意味するところは分からない言葉であるが、矢張り80歳を超えて来ると実感が自分でもはっきりと分かるようになる。何となくよろめいたり、一寸したものに躓いたり、人や所やものの名前が出てこないことが少なくない。膝が痛んで出歩くのに不自由になる。特に階段など、昇降には一段一段手すりに捕まりながらする惨めさである。
「八十年も使うと磨り減りますよね」 ・・・ 次回に続く
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第100回触媒討論会懇親会での挨拶(4) [読物]
第100回触媒討論会懇親会での挨拶(4)
最近アメリカ化学会が総力をあげて作ったChemistryと言う本の訳本も出ましたが、中身は正に「叡智を養う」化学です。初めからおわりまで、考えに考えて化学を学ぶ本で、有機化学とか、無機化学などの章はありません。ある現象を示して、これは如何に説明するか、それは如何に証明するか、他に説明はあり得ないのか、正に考えに考える教科書です。コンピュータができないことをクリエイテイブに考える、正にそういう時代になってきたのです。氾濫する情報に一つ加えるのではなく、情報の量よりも質の問題になってきました。皆さん、殊に若い人たち、うんと頭を使ってクリエイテイブな研究をしてください。
2007年9月18日
連載は終り