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ノーベル平和賞を劉さんに(1) [随想]

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長い間ご無沙汰いたしましたが、最近、ホームページを更新しましたので、ご紹介したいと思います。よろしくお願いいたします。

ノーベル平和賞を劉さんに(1)

 2010年のノーベル平和賞を中国の民主活動家の劉暁波さんが受賞することになったという報道が10月9日の新聞に報道された。劉さんは2008年12月に中国の共産党体制の廃止や三権分立、集会の自由、一党独裁体制の廃止などを求めたいわゆる「08憲章」(中国の作家303人が署名)を書いた中心的人物として、また以前にも天安門事件の活発な指導者などで身柄を拘束されたこともあり、懲役11年で服役中の人物である。中国は平和賞の行方の気配を予め知ってノルウェイを事前に政治的な脅迫をしてはいたが、平和賞の委員会はそれを無視して、劉さんに決めたのである。

 中国にも憲法には一応言論や出版、集会などの自由が保障されているそうではあるが、実際にはそれらが極めて限定されており、何も暴力行為のためではないのに、言論の内容が国家の基本体制に触れていただけに、中国共産党としては無視できなかったのであろう。平和賞の外国からのテレビなども中国国内では中断をしたというほどショックが大きかった模様である。中国としてはこの平和賞は「絶対反対」を繰り返している。恐らく劉さんは言うまでもなく劉夫人もノーベル賞の贈呈式に出席させて貰えないだろう。しかし伝え聞くところによると劉さんはそれを聞いて天安門事件で殺された多数の同志のことを思い涙したという。現在ではあらゆるメディアを通して言論の自由は世界各国に行き渡っており、これから中国人たちが今回の賞についてどのような影響を受けるか、世界でも第二の経済大国であるだけにこれからの変化が極めて注目されるのである。

 

 それについて思いだされるのは私が中国を初めて訪問した時のことである。19758月であったが未だ毛沢東も元気でいわゆる「四人組」の「文化革命」の最中であった。その頃は革命政府の安定のために教育などは二の次で、貧農の子だからとか政治的に信頼できる人物を推薦して大学に入れ、昔米国が創った中国でもトップクラスの清華大学を訪れた際研究室も見せず、近代的装置は「製作中」、学生の実験室を見せてくれと言っても「修繕中」とか言って見せもせず、教育は正に地に落ちた形で、一人当たりの教育費はインド以下ということであった。訪れた大学や研究所では主に我々と応対した連中は学問や技術の専門家というよりも政治的に指導的な連中が多く、「革命」の素晴らしさを専ら強調していた。

 革命のためにそれまでの研究所長を好ましくない人物と言う意味で見せしめに黄色いトンガリ帽子をかぶせて豚に餌をやらせたり監獄に入れたり、驚くほどのめちゃくちゃな時代であった。私の知った中国化学会の副会長をした大連の化学物理研究所長は偉かっただけに黄色い帽子を被せられ余りの精神的ショックのために記憶喪失になっていた。文化革命後に彼の家に招待された折奥さんが言っていた、「主人をこんなひどい目にあわせた悪い奴らがまだはびこっているんですよ」と。横にいたご主人の姪の美しく利口そうなお嬢さんも大学には行かせてもらえず、エレベータの運転を仕事にしているとのことであった。ある音楽大学の学長だった人が革命中上海の監獄に入れられていたが、北京から孫娘が来てくれて「オジイチャン」と言ってくれた時は「思わず涙が出ました」とのことであった。私の親しいKさんの家でも、高校生の息子さんが父親が大事にしていた西洋音楽の貴重なレコードを全部割って捨てたり、父親が育てていた蘭はブルジョアのすることだと全て廃棄したという。お母さんは本当に悲しかったと涙ぐんでいた。孔子もけしからん人物になっていたし、革命のためには「古いものは捨てろ」の時代であった。(一方でその頃の日本の朝日新聞などは中国の若い連中の眼が冴えているとか、革命をほめちぎっていた。日本では丁度大学紛争中でもあり、「造反有理」と学生たちをけしかけ、いわゆる「進歩的な連中」が幅を利かせていた頃である)訪中の最後に上海での「座談会」の席上で、我々の団長格の東工大のMK先生が発言された。「自分は戦時中満鉄の大連の研究所で働いていて、中国を愛しているが、世界の科学技術が飛躍的に進歩している現在、中国がこのような状態でいいとは到底思えない」と。勿論彼らは軽蔑の冷たい眼を示しただけであった。しかし我々の中にも文化革命に強い印象を受け帰国後も大変に持ち上げていた人もいた。・・・次回に続く

 

 ノーベル平和賞を劉さんに (HPへ)

 


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コメント 6

mimimomo

こんにちは^^
お久しぶりです。
お元気そうで何よりでございます^^
中国は35年前と政治的にはあまり変わってないように思います。
共産主義であり、領土拡大の歴史ですね。
ほんとうに国を思う中国人の方にはお気の毒な事です。
by mimimomo (2010-11-01 11:32) 

mamii

お久しぶりです。
中国は共産党の一党独裁政治の社会ですので、共産党を壊滅させない限り今のままでしょう。
by mamii (2010-11-01 13:37) 

yakko

こんにちは。お久しぶりです。嬉しい再開です(*^_^*)
読ませていただいて、中国は心底恐ろしい国だと思いました。
by yakko (2010-11-01 13:59) 

こうちゃん

お元気でよかったです。
中国をはじめ、ミャンマーもちょっと
首を傾げたくなる体制ですよね。
by こうちゃん (2010-11-01 14:05) 

Silvermac

久々の復活、オメデトウございます。宜しくお願い致します。
中国の共産党一党独裁が変わらない限り中国は世界のスタンダードに縁遠い国でしょう。
by Silvermac (2010-11-01 14:05) 

めもてる

お久しぶりです。最近の中国の対応はどうかと思いますね、ソビエト崩壊と同じ道を歩んでいるんでしょうね。
by めもてる (2010-11-01 20:23) 

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